ゴルフを始めたばかりの頃はスライスに悩まされるものと相場が決まっています。そこから悪戦苦闘のスライスからの脱却作戦が始まるのですが、果たして時間と労力をかけてまで、スライスからの脱却は必要でしょうか。ここではスライスを受け入れてフェードに挑戦する方法を説明します。
スライスが出る原因
そもそもスライスはなぜ出るのでしょうか。スライスの出る原因を確認しておきましょう。
Dプレーン理論によるスライスの原理
Dプレーン理論とは、近年進化した高速度撮影などの映像技術によって、映し出されたインパクト後のボールの動きを検証、そこから導き出された理論です。
ボールが打ち出される方向
これまで、ボールが打ち出される方向はインパクト時のクラブの進行方向だとされていました。ところが高速度撮影によって映し出された映像ではボールの打ち出される方向は、クラブの進行方向ではなかったのです。
高速度撮影の超スロー映像を検証の結果、
・ボールの打ち出される方向はインパクト時のフェースの向きに影響される。
・クラブの進行方向からフェースの向きに向かってのスピンが掛かる。
・スピン量はクラブの進行方向とフェースの向いている角度が大きいほど多いことなどが分かってきました。
インパクト時のクラブのスイング軌道とクラブフェースとの関係は、オープン、スクエア、クローズの3種類しかありません。
・オープン 右打ちの場合クラブの進行方向に対してフェース面が右を向いている。
・スクエア クラブの進行方向とフェース面が同じ方向を向いている。
・クローズ クラブの進行方向に対してフェース面が左を向いている。
実際のボールは3次元の動きをしますが、平面的に見るとこのような感じです。
スライスの原理
打ち出された後で右に曲がるスライスはDプレーン理論に当てはめてみると、クラブの進行方向よりもフェースの向きが右を向いていることになります。つまりオープンの状態でボールに当たって、右方向のスピンが掛り、ボールは右に曲がってスライスボールになるのです。
ただし、ボールにはクラブのロフトによるバックスピンも掛かっています。バックスピンの成分とサイドスピンの成分を持った回転つまり、回転軸が右に傾いたバックスピンが掛りながら飛んでいきます。
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クラブのスイング軌道は3種類
インパクト時のクラブの軌道を見てみると、目標方向に対して外から中に入ってくるアウトサイドインか、目標方向に対してクラブがまっすぐに振られているインサイドイン、インサイドからインパクトを迎えてアウトサイドにクラブが抜けるインサイドアウトの軌道しかありません。
クラブの軌道3種類それぞれにスライスボールの可能性があります。先ずは自分のスイング軌道を確認しておきましょう。スイング軌道によってスライスの出方が違ってきます。
アウトサイドインのスライス
初心者に一番多いスライスがアウトサイドインのスライスのようです。フェースはスイング軌道より右を向いているため、スイング軌道ほどは左に出ることはありませんが、一度左に出て右に曲がるボールが多くなります。まっすぐ出たボールが右に曲がるスライスも、アウトサイドインの軌道より生まれます。
インサイドインのスライス
クラブは目標に向いて振られていますが、フェースが右を向いているため右に出たボールがさらに右に曲がるスライスです。このスライスが多く出る人はスイング軌道が目標方向に振られている証拠。フェースの向きを少し変えるだけで安定した球筋が打てるようになります。
インサイドアウトのスライス
このスライスはかなり右に出るスライスになりますが、初心者には少ないスライスです。インサイドアウトの軌道はドローの球筋が多く、スライスはあまり見かけません。もし出たとしても単発的ならそれほど心配することもないでしょう。
スライスからフェードへ
曲がりが大きいスライスは飛距離が出ない、右ラフや右のOBに飛んでいく可能性が高いなどの弊害があって、なるべくなら打ちたくない球筋と思われているようです。しかし裏を返せば、右が怖いということは左に深いラフやOBがあっても全然怖くないということ。右側の対策さえしていれば安心してドライバーを打っていけます。
また、大きく曲がるスライスは、曲がり幅を少なくすればフェードと呼ばれる、一級品の球筋に変身するのです。
スライスボールが出る人の取るべきアドレスとは
左に飛びだして右に曲がるスライスボールは、目標方向を向いてアドレスを取ると、どうしてもボールは右のラフに入りやすくなります。そうならないためにはスライス対応のアドレスが必要。特に大けがをしやすいドライバーでのショットは、万全の対策が必要です。
ティーイングエリアでのスライス対策
ティーイングエリアは2つのティーと後方2クラブレングスで囲まれた長方形です。このエリア内ならどこから打っても構いません。なるべくフェアウェイを広く使うために、ティーイングエリアの右側にティーアップを心がけましょう。そうして、アドレスはフェアウェイの左側を向きます。自分の飛距離や曲がり幅を考えると、フェアウェイのどの辺りに向けばいいかが分かってきます。
グリーンを狙うショットのスライス対策
アイアンでもスライスが出る人はそれなりの対策が必要です。グリーンは左サイドを狙ってまずはグリーンオンを目指しましょう。左サイドにピンがあれば狙うのはむつかしくなりますが、右サイドにピンが立っていればスライサーの出番ですよ。
フェードへの挑戦
やや左に出たボールがゆっくり右に方向を変えて目標目指して飛んでいく。右利きが打ったフェードの球筋です。
球筋からもわかるとおり、インサイドイン軌道やインサイドアウト軌道ではフェードは打てません。ただ一つ、フェードを打てるのは諸悪の根源のように言われる、アウトサイドインのスイング軌道なのです。
アウトサイドイン
アウトサイドインのスイング軌道が初心者に多い理由はいろいろです。曰く、トップで左手首が飛球線側に折れている、右手が伸びていないなどなど。ただ、なぜそうなったかといえば、その打ち方が自分にとって一番振りやすかったからに他なりません。
アマチュアゴルファーが練習できる時間は限られています。その短い時間を消費してまで、せっかく形になりつつあるスイングをわざわざ変える必要はないのです。
大きく曲がるスライスは、アウトサイドインの程度が大きいのかといえばそうではなく、スイング軌道に対してフェース面が右を向く程度が大きいからです。スイング軌道に対してフェースの向きを合わせることで、スライスの曲がり幅は小さくなります。
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スイング軌道にフェースの向きを合わせる
スイング軌道に対してオープンになっているフェースの向きを是正する方法はいろいろあります。
アドレスでフェースをクローズに構える
アドレスでクラブを構えるとき、グリップは同じで今までよりもフェースを左に向かせて構えます。スイング軌道とフェースの向きが合ってくると、スイング軌道方向にボールが打ち出され曲がり幅は徐々に少なくなります。
左に打ち出される程度が大きければ、アドレスでやや右を向いて構えるなどの対応をすれば良いでしょう。
グリップをストロンググリップに握り替える
グリップをストロンググリップに変えてみるのも一つの方法です。ストロンググリップとは左手を被せて握る方法。通常の握りから左手を少し右方向に回転させて握り、右手も左手に合わせて右回りに回転させます。この握り方でスイングすると、右に回して握った分元に戻ろうとしてフェースが閉じやすくなるのです。
スイング軌道を安定させる
毎回ボールの打ち出し方向が違う人は、スイング軌道が安定していません。これでは、いくら理にかなったアドレスを取っても結果は毎回違ってきます。先ずは、スイング軌道を安定させましょう。
スイング軌道は、グリップの違いや、テイクバックの位置にかかわらず、どれだけ練習スイングをしたか、つまりスイングの回数に比例して安定してきます。練習場でのスイングはもちろん、素振りの回数も含めてある程度スイング回数を積み重ねないとスイング軌道の安定は望めません。
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アマチュアの練習時間は限られている
アマチュアの練習時間は限られています。そのなかでいかに上達するかが考えどころ。大幅なスイング変更は時間もかかるし、最悪自分のスイングを見失う可能性も。スライスが持ち球なら、そのスライスに磨きをかければいいのです。
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